| 「ハーレムにゴスペル&ソウルフード堪能ツアーに行きませんか?」 友達のT嬢からある日メールが来た。ヌーヨークに住むなら一度は行ってみたい場所、それはハーレム。エリアによって住んでいる人種も聞こえてくる言葉も食べる料理も全く違うこの街でも(ちなみに私の住んでいるエリアはインド人とラティーノしかいない)、極めつけは黒人コミュニティのハーレムである。以前車で通過した時は「お願いだからココで降ろさないでノ」と泣いて頼んだ私だが、最近は治安がよくなっているという噂だし、日本人もけっこう住んでいるらしい。何より本場のゴスペルが聴ける!というのはかなり魅力的な提案。しかも、何かの雑誌に「ゴスペルが聴けるハーレムのミサはあまりのサービスに卒倒する人も」という文章を発見。卒倒するサービスって何なんでしょうか。 というわけで、めざすは日曜のミサである。アメリカでは日曜の午前中に各教会でミサが行われているのだが、そこはハーレム。ゴスペル歌いまくりである。それが目当ての観光客も多いようで、有料の教会も多いとS嬢。お金払うのイヤンな私たちは、アポなし&タダで入れるGreat Refuge Templeに潜入することに。こわごわ降り立った地下鉄125丁目駅付近は意表をつくほど清潔で、これがあのハーレムなのか!?と驚きつつ、「1ドルでドレッドいかがやね?」というオバチャンたちの勧誘をくぐり抜けて、目的の教会にたどり着いたのは午前11時すぎ。 モダンな外観同様、中に入ってみるとそこは教会というより劇場という感じだ。中央ステージのまわりは白壁がゆるやかな曲線を描いて天井まで続いていて、荘厳というより「なんか音響よさそう」という印象。事実、ステージでは男女20人ほどの黒人グループが気持ちよさそうにゴスペルを歌っている。おおお、さすが本場、気持ちいいコーラスではないか。しかもなんつー激しい感情表現。エモーション!エクスプレッション!デフィニション!よくわからんけど、そんな感じでビンビン響いてくる。 そして。 それは開始から1時間たった頃に起きた。全身でゴスペルと神父のスピーチをザフザブ浴びていた観客(というか信者のみなさん)に何やら異変がノ。やれ1曲歌えば一緒に歌って大合唱、スピーチ聞けばスタンディングオベーション。しまいにゃタンバリン、マラカス、カウベルなどを取り出してシャンシャン鳴らし出す方々もノ。ミサにマイタンバリンってどうなのよこれ、と思いつつ、恍惚の表情でつぶやき出す人、天井に両手を掲げて不審な動きをする人たちにはさまれ、完全に取り残される私たち。 そして会場がパーフェクトにあたたまったクライマックス、いよいよ真打ち登場である。神のことは考えても食事のことは考えてなさそうな巨漢神父が壇上でスピーチを開始。「今日は3000ドルも寄付をもらったぜイエー!」「おーイェー!!」「世の中は大変なことだらけえ〜エッ、神様はいつオレを助けてくれるんだい〜イッ」ノ明らかにラップである。しかも不思議にリズミカルな節回しが疲れた体に妙に気持ちよくって、だんだんヘンな気持ちになってくる。神父のるのる、テンポどんどん速くなる、グルグルまわる、世界がぐるぐるぐるぐる…。 マズイと思った時には遅かった。壇上のゴスペルグループはもちろん、客席もケイレンする人泣き出す人が続出。完全なトランス状態である。見ず知らずの隣の人と抱き合い、手を握られ泣きながらブツブツ唱えられノえ、もしかしてクスリやってんの?と疑いたくなるような狂乱の宴にボーゼン。これか。これなのか。卒倒するほどのサービスってノ。 ゴスペルは教会音楽なわけだから、歌えばテンションが上がるってことをよく考えておくべきだった。なのに私たちは睡眠不足の上に空腹という最悪のコンディションで、あのスピーチとゴスペルをザフザブ浴びてしまったわけだ。なんとか教会を這い出て、ふらつく足でソウルフード店にたどりつき「アッチにいっちゃったらヤバかったですねえ」「すげーなハーレム」と無事の帰還を喜びあったのだった。 今まで何度かミサには行ったことがあるが、こんな型破りなのは見たことない。ちなみにミサに来ていたのは大半がきれいにドレスアップした紳士淑女のみなさん。嗚呼なのにそんなに乱れてしまわれるんですか…。おそるべしハーレム!
友達が遊びに来た時には絶対ここに連れていこうと心に決めた、そんな日曜でした。
▲ミサがあったGreat Refuge Temple。2007年現在、ミサはもう無料ではなくなってしまったと風の噂で聞きました…。 |