イライラするひと
今日、仕事で電車に乗っていた時のこと。
混み合う車内で立っていると、
目の前に座っている、齢70超とおぼしき白髪のおじいさまが
何やらおもむろにカバンから紙の束を取り出しました。
見ると、大量の原稿用紙。
原稿用紙なんて、最近はめったに見ませんから
ついつい食い入るように見てしまいました。
観察の結果、その原稿用紙のはしには
「シナリオセンター」
という文字とロゴが入っていました。
ドラマの脚本でしょうか。
ばっさばっさとせわしなく手を動かしながら
達筆な文字で書かれたその原稿を
自ら赤ペンで添削、修正していくおじい様。
ホッチキスでいくつかの束があるところを見ると
どうやら1束が1本のシリーズのようです。
目を細めて、小さく書かれたタイトルを見ました。
「イライラする人」
連ドラとしては斬新なタイトルです。
その第1話。
タイトルは
「待つ人」
イライラしているのに、待っているのか。
かなりアバンギャルドな作風のようです。
待っているからイライラしているのでしょうか。
おじい様は次話へ進みます。
タイトル
「三者面談」
唐突です。
が、確かにイライラするシチュエーションです。
ていうか、ハラハラしそうです。
じい様の手は、さらなるストーリーへと進みます。
第3話
「カフェオレ」
いきなり和みました。
怒涛の急展開です。
気になった私は、とうとうじい様の隣へ座ってみました。
達筆すぎるその文字で
己の原稿を一心不乱に添削するじい様。
せわしなく原稿用紙を行き来するそのはざまで
食い入るように原稿を読みました。
「カフェオレ」の回をなんとかチラ見すると
そこにはこうありました。
「たたずむ幸子。」
幸子というスタンダードすぎて今では全く使わないヒロイン名。
そして、幸子というわりには幸薄そうなその人生が
その1行に凝縮されているようです。
さらに盗み見したところによると
幸子は「夏季」と待ち合わせをしていたようです。
夏季。
いきなりハイカラです。
続きが気になりすぎて、
もしかして気づいてんじゃないかというくらいに
身をのりだして読んでいたら
あっちゅうまにカリスマ作家は電車を降りてしまいました。
私がイライラする人になってしまいました。
誰か結末おしえて。
*mixi日記(2008)より転載しました。